BINOM.INV 関数は、二項分布の累積成功確率が基準の値以上になる成功数のなかで、最小値を求めます。
(二項分布の累積した成功率が、ある基準の値以上になるときの、最小の成功数を計算します。)
この記事では、コイン投げを10回行って、表が出る回数を事例として、BINOM.INVのつかい方について説明します。
BINOM.INV 関数とは
BINOM.INV 関数は、二項分布の累積確率が基準の値以下になる成功数のなかで、最小値を求めます。
「=BINOM.INV(試行回数, 成功率, 基準値)」
と入力します。これらの言葉について説明をすると、
試行回数
全体の試行回数のことです。
※実験や観測を「試行(trial)」といいます。
成功率
事前にわかっている確率のことです。たとえば、コイン投げをして表が出る確率は、1/2 です。
基準値
累積した成功率が、ある基準の値以上になるときの、最小の成功数を計算しますが、この「ある基準」がこれに該当します。
二項分布とは
このBINOM.INV 関数をつかう前に、二項分布について確認しておきましょう。すでに理解されている方は読み飛ばしてください。
コイン投げで考えてみます。コイン投げをすると表が出る確率は1/2、裏が出る確率も1/2 です。
10回コイン投げをした結果はどうなるでしょうか。表が5回出て、裏が5回出ることもあれば、表が8回・裏が2回出るということもあります。
「10回コイン投げをすること」を何度か繰り返すと、
- 表が5回、裏が5回もあれば、
- 表が7回、裏が3回もあるし、はたまた
- 表が0回、裏が10回、なんでことも確率は小さいですが、ありえます。
表が出ることを「成功」とするなら、10回コイン投げをしたときに、成功数は5回になったり、7回になったり、0回になったりするわけです。
コイン投げで表が出る確率は1/2 なのですから、10回のコイン投げをすると、直観的に表が出るのは5回になることがいちばん多いだろうなとわかります。
10回のコイン投げをして、表が出る成功数が7回というのも、まあまあ発生するだろうとわかります。
10回のコイン投げをして、表が出る成功数が0回というと、めったにないだろうなとわかります。
それでは、いちばん多い、まあまあ多い、めったにない、というのは数値であらわすとどのくらいになるでしょうか。
それを示すのが、二項分布です。この例では、二項分布とは、10回のコイン投げという試行のうちで、表が出る回数(成功数)が従う確率分布のことです。
10回のコイン投げを行って、10回のうち
- 表が0回出る確率
- 表が1回出る確率
- 表が2回出る確率
…と、それぞれの確率を計算するには、
f(x)=nCx × px ×(1-p)n-x
の式で計算できます。表が0回出る確率から10回出る確率まで計算すると、次のようにまとまります。
- f(0)=10C0 × 0.50 × 0.510−0 = 0.00098
- f(1)=10C1 × 0.51 × 0.510−1 = 0.0098
- f(2)=10C2 × 0.52 × 0.510−2 = 0.0439
- f(3)=10C3 × 0.53 × 0.510−3 = 0.1172
- f(4)=10C4 × 0.54 × 0.510−4 = 0.2051
- f(5)=10C5 × 0.55 × 0.510−5 = 0.2461
- f(6)=10C6 × 0.56 × 0.510−6 = 0.2051
- f(7)=10C7 × 0.57 × 0.510−7 = 0.1172
- f(8)=10C8 × 0.58 × 0.510−8 = 0.0439
- f(9)=10C9 × 0.59 × 0.510−9 = 0.0098
- f(10)=10C10 × 0.510 × 0.510−10 = 0.00098
で、これをグラフにすれば、二項分布のグラフができます。
二項分布についてはこちらの記事を参考にしてください。
参考記事 ベルヌーイ試行と二項分布の違いと関係性
エクセルでの二項分布のつくりかたはこちら。
参考記事 エクセル関数BINOM.DISTによる二項分布の作り方
エクセルで、BINOM.DIST関数をつかうと次の表のように、10回のコイン投げを行って、10回のうち
- 表が0回出る確率
- 表が1回出る確率
- 表が2回出る確率
…と、それぞれの確率を計算をすることができます。
成功数 | 確率 | 累積確率 |
---|---|---|
0 | 0.00098 | 0.00098 |
1 | 0.00977 | 0.01074 |
2 | 0.04395 | 0.05469 |
3 | 0.11719 | 0.17188 |
4 | 0.20508 | 0.37695 |
5 | 0.24609 | 0.62305 |
6 | 0.20508 | 0.82813 |
7 | 0.11719 | 0.94531 |
8 | 0.04395 | 0.98926 |
9 | 0.00977 | 0.99902 |
10 | 0.00098 | 1.00000 |
成功数5 回が0.24 で、いちばん成功確率が大きいです。
成功数0 回では、0.0098 でとても小さい確率ですね。
累積確率とは
- 表が0回出る確率
- 表が1回出る確率
- 表が2回出る確率
…を足し合わせていったものです。その成功数以下の成功確率の合計になります。
たとえば成功数3 回の成功確率は0.117 ですが、0 回から3 回の成功確率を合計した累積成功確率は0.171 です。
さて、ここでBINOM.INV 関数の話に戻ります。
BINOM.INV 関数での計算方法
コインを10回投げるときに、表が出たら成功であることとします。BINOM.INV 関数をつかうと、このときの、成功確率0.2 以上になるときの成功数は?という問いに答えることができます。
セルに
「=BINOM.INV( )」
を入力し、
「=BINOM.INV(試行回数, 成功率, 基準値)」
試行回数、成功率、基準値を指定すると、計算されます。
10回のコイン投げでいえば、試行回数は10回です。成功率は、1/2です。
基準値は0.30 としてみます。
これで、表が出る確率の累積が、0.30 以上となるもっとも少ない成功数を計算できます。計算された成功数以上の成功数であれば、累積確率は0.30 以上あるよ、ということになります。
結果、4 回となりました。累積確率が、0.30 以上となる最小の成功数は、4 回です。
4 回の成功であれば、累積確率が0.30 以上となります。
各成功数ごとの確率と累積確率の表を見てもそうなっています。
成功数 | 確率 | 累積確率 |
---|---|---|
0 | 0.00098 | 0.00098 |
1 | 0.00977 | 0.01074 |
2 | 0.04395 | 0.05469 |
3 | 0.11719 | 0.17188 |
4 | 0.20508 | 0.37695 |
5 | 0.24609 | 0.62305 |
6 | 0.20508 | 0.82813 |
7 | 0.11719 | 0.94531 |
8 | 0.04395 | 0.98926 |
9 | 0.00977 | 0.99902 |
10 | 0.00098 | 1.00000 |
では、基準値を0.80 にしてみましょう。
結果、6 回となりました。累積確率が0.80 以上となる最小の成功数は、6 回です。
6 回の成功であれば、累積確率が0.80 以上となります。