幾何平均(相乗平均)の意味と計算方法~伸び率の平均を求める~




「身長が毎年○○%ずつ伸びている」、「貯金が毎年○○%ずつ伸びている」といった年の平均伸び率を計算するときには、各データを足してデータ数で割るという算術平均は用いません。

変化率の平均を見るには、幾何平均を用います。

具体的にどんなときに、どんなふうに計算すればいいのか、疑問があるかと思います。

この記事では、幾何平均の意味、計算式について、そして実際に例をあげて計算方法を解説します。

幾何平均(相乗平均)の意味

幾何平均とは、各データの値を全てかけ合わせて、データ数の累乗根をとって得られたものです。

上記したように、変化率で表されるデータの場合に用いる代表値は、幾何平均が望ましいです。

幾何平均は相乗平均ともいいます。英語では geometric mean です。

変化率というのは、掛け算で変化していくものです。

たとえば、貯金が年率5%で値が大きくなったら、1.05を掛けた値になりますよね。翌年に年率7%で値が大きくなったら、最初の貯金額に1.05を掛けたものに、さらに1.07を掛けた金額になります。

このときの変化率の年平均を求めるとなると、幾何平均をつかうのが正しいです。

幾何平均(相乗平均)と計算式

幾何平均(geometric mean)は、データ数がn個あったら、n個のデータを掛け合わせて、そのn乗根をとることで得られる値です。

$$x_G=\sqrt[n]{x_1\times x_2\times x_3\times … \times x_n}$$

aとbの2個のデータだけで考えてみましょう。aとbを掛け合わせた値の二乗根が幾何平均です。

$$\sqrt[2]{a\times b}$$

aとbとcの3個のデータで考えてみると、aとbとcを掛け合わせた値の三乗根が幾何平均です。

$$\sqrt[3]{a\times b\times c}$$

それでは、例をあげて幾何平均をつかった計算をしていきます。

伸び率の計算方法「幾何平均」の使い方

ここに起業して3年経過した伸び盛りのベンチャー企業があります。 開業から3年までの売上の変化を見てみましょう。

  • 1年目の売上 1000万円
  • 2年目の売上 2500万円 前年から250%の伸び
  • 3年目の売上 4000万円 前年から160%の伸び

2年目、3年目と売り上げを順調に伸ばしているようですね。2年目、3年目の平均伸び率はいくつになるでしょうか?

算術平均で計算してみる(間違い)

伸び率は、250%(2.5)と、160%(1.60)です。

単純に各データの数値を足してデータ数で割る方法である算術平均は、

$$(2.5+1.6)\div2=2.05$$

となります。年間の平均伸び率は205%(2.05)なのでしょうか。

もしそうだとしたら、それが2年分あるわけですから、 初年の売上高である1000万円に、205%(2.05)を2回掛け合わせると、3年目売上高の4000万円の数値となるはずが・・・

$$1000万円×2.05×2.05\\=4202.5万円$$

計算された値は4202.5万円で、実際の売上高は4000万円。異なる値になってしまいました。

単純に各データの数値を足してデータ数で割る方法(算術平均)では、正しい平均伸び率が計算されないようですね。

伸び率の計算は幾何平均を使う

平均伸び率を正しく表すのは、幾何平均です。計算式は下記のようになります。

$$x_G=\sqrt[n]{x_1\times x_2\times x_3\times … \times x_n}$$

上記のベンチャー会社の売上変化は、

  • 1年目の売上 1000万円
  • 2年目の売上 2500万円 前年から250%の伸び
  • 3年目の売上 4000万円 前年から160%の伸び

でしたから、幾何平均の数式に当てはめて計算すると、

$$\sqrt[2]{2.5\times 1.6}=\sqrt{4}=2$$

この2年間の年間平均伸び率は2倍、つまり200%になりました。これが伸び率の年平均です。

1年に200%伸びて、さらに次の1年に200%伸びたことになりますから、初年度の売り上げ1000万円に、2.00(200%)を2回かけると、3年目の売上である4000万円の値になるはずです。

$$1000万円×2×2=4000万円$$

実際の売上と同じ4000万円になりました。

もっと長い期間での幾何平均とみてみるとどうなるでしょう。

5年間の平均伸び率を幾何平均で計算する

別の会社の売上変化を見てみましょう。起業して6年、売り上げを伸ばし続けている会社です。

  • 1年目 2000万円
  • 2年目 2500万円 125%
  • 3年目 4000万円 160%
  • 4年目 8000万円 200%
  • 5年目 1億2000万円 150%
  • 6年目 1億5000万円 125%

初年度からの5年間の伸び率を計算すると、各年度のデータを掛け合わせて、データ数の5乗根でルートをとると、

$$\sqrt[5]{1.25\times1.6\times2.0\times1.5\times1.25}\\=1.49628…$$

平均すると1年間に売上が1.49628…倍になっているわけです。年平均の伸び率1.49628を、初年の売上2000万円に5回かけると、6年目の売上1億5000万円になるはずです。

$$2000万×1.49628^5\\=1億5000万円$$

一致しました。

ところで、最初の売上と6年目の売上だけを見れば、7.5倍に増えています。5年間で2000万円の売上が1億5000万円になっているのですから、売上は5年間で7.5倍になっていますね。

$$15000万円\div2000万円=7.5$$

この7.5という数字は、各年度の伸び率を掛け合わせた数字と一緒になっています。

$$1.25×1.6×2.0×1.5×1.25\\=7.5$$

5年の間、各年の伸び率を掛け合わせていって7.5倍になったのですから、7.5の五乗根をとれば、1年平均に戻してやることができます。7.5の五乗根が、年平均伸び率になるわけです。

$$\sqrt[5]{7.5}=1.49628$$

年平均が1.49628の伸び率です。初年は2000万円の売上で、5年後の売上は1.49628を5回掛け算した7.5倍の売上高=1億5000万円です。

まとめ

このように、5年間の伸び率の年平均を計算する場合、各年の伸び率をかけ、

$$1.25×1.6×2.0×1.5×1.25$$

その累乗根をとれば、伸び率の年平均となります。

$$\sqrt[5]{1.25\times1.6\times2.0\times1.5\times1.25}\\=1.49628…$$

データがa、b、c、d、eの5個あったら、5個のデータを掛け合わせて、その五乗根をとるということ。

$$\sqrt[5]{a\times b\times c\times d\times e}$$

データ数がn個あったら、n個のデータを掛け合わせて、そのn乗根をとります。

$$\sqrt[n]{x_1\times x_2\times x_3\times … \times x_n}$$

伸び率など比率(%)で表わすデータは、平均を出す場合には幾何平均を使用します。

エクセルでの幾何平均の計算方法は、下記の記事を参考にしてください。

参考記事 幾何平均(相乗平均)をエクセル関数GEOMEAN で計算する