高校生の頃、自分の誕生日に学校の教室へ入ると「今日、誕生日だね」と仲の良い男友達に話かけられました。
それを聞いていた隣の女の子が「今日誕生日なの?私も誕生日だよ!」と言うではないですか。同じ教室にまったく同じ誕生日の人がいて驚いていました。
社会人になって会社で仕事し始めてからも、誕生日の一致で驚くことがありました。
100数十人程度の事業所で一緒に仕事をしていたある先輩が、職場の他の人と同じ誕生日であったのです。先輩本人もビックリしていましたし、私や他の同僚もその話を聞いて、すごいと盛り上がっていましたね。
このような誕生日の一致は、どのくらいの確率で起こるものなのでしょうか。学校の同じクラスや同じ職場に誕生日が同じ日の人がいたら、偶然の一致に驚いてしまいますよね。
たしかに、自分と誰かの誕生日が一緒になる確率は、あまり大きくないのですが、誰かと誰かが同じ誕生日になる確率は、実はよくある話なのです。
この記事では、誕生日が一致する確率を計算し、さほど珍しいことではないことを説明します。
自分と誰かの誕生日が同じである確率
学校の40人クラスのなかで、「自分の誕生日と誰かの誕生日が同じ日になる確率」を考えましょう。
自分と同じ誕生日であるのは1人だけとか、3人いるとか、5人もいるとか、いろいろな場合があります。
「自分の誕生日と誰かの誕生日が同じ日になる確率」とは、これらをすべてひっくるめたものです。それを「少なくとも誰か1人が自分と同じ誕生日になる確率」というように、「少なくとも」の言葉を用いることが多いです。
これをそのまま計算していくのは難しいですが、余事象の考えで計算すればやりやすいです。
余事象とは、その事象が起きないことです。
「少なくとも1人が自分と同じ誕生日になる確率」を計算するには、すべての場合から、「自分の誕生日と同じ誕生日の人がいない確率」をマイナスします。
40人がそれぞれ、自分と同じ誕生日にならない確率を見ていきます。
1人目・・・自分と同じ誕生日ではない確率は、\(\frac{364}{365}\)です。
自分の誕生日が1月1日であったら、自分と同じ誕生日になるのは1月1日であって365日中で1日だけです。自分と同じ誕生日にならないのは1月1日以外の日で、365日中364日です。
2人目・・・自分と同じ誕生日ではない確率は、同じく\(\frac{364}{365}\)です。
3人目・・・自分と同じ誕生日ではない確率は、同じく\(\frac{364}{365}\)です。
40人の一人一人が、自分と同じ誕生日にならないのは、それぞれ$\frac{364}{365}\)ですね。40人全員が自分と同じ誕生日でない確率は、それぞれの確率を掛け合わせればいいので、
$$\frac{364}{365}×\frac{364}{365}×\frac{364}{365}…$$
を繰り返していって、自分以外の人数分、39回掛け合わせます。つまり、
$$\left(\frac{364}{365}\right)^{39}=0.89853$$
となります。これが、40人クラスで、自分が他の39人と誕生日が異なる確率です。
「少なくとも1人が自分と同じ誕生日になる確率」を計算するには、自分が他の39人と誕生日が異なる場合ではない場合、を計算すればいいのですから、
1から 0.89853をマイナスします。
$$1-0.89853=0.10147$$
10.147%の確率となります。これは、自分と他の39人の誕生日が異なる場合以外すべてです。
少なくとも一人が自分と同じ誕生日になる確率の計算方法
学校のクラスの人数をn とすると、次の式で計算できます。
$$1-\left(\frac{364}{365}\right)^{n-1}$$
ホテルにチェックインするときに、必ず提出を求められるのがパスポート。とあるホテルで、受付の女性にパスポートを渡したときのことです。
受付の人が私のパスポートを見て名前や国籍を確認するのですが、パスポートを開いたらいきなり笑い出しました。
「パスポートの私の顔を見て笑っているのか?」と心配になりましたが、笑った後の言葉は 「私も同じ誕生日だよ」でした。生年月日がまったく同じであったので笑い出してしまったとのことでした。
受付の人はパスポートに記載されている生年月日あたりも見るでしょうから、40回のホテルに宿泊すれば、つまり40回パスポートを提出すれば、受付の人と同じ誕生日であることが、10%くらいの確率で起きます。
誰かと誰かの誕生日が同じである確率
では今度は、学校の40人クラスのなかで「誰かと誰かが同じ誕生日である確率」を考えてみましょう。この問いには、上記と同じく余事象をつかう考え方が役に立ちます。裏返して考えるのですね。
「誰かと誰かが同じ誕生日である」とは、つまり同じ誕生日のペアが1組以上いることになります。3組いる場合もあれば、5組いる場合もあります。「少なくとも同じ誕生日のペアが一組いる」と言うことができます。
こんな感じで、余事象をつかうときには「少なくとも」という言葉をよく用います。
上記したように、これをそのまま計算するのは難しいのですが、余事象をつかえば計算しやすいです。
「同じ誕生日のペアが少なくとも一組いる」の余事象は「全員が違う誕生日」。「全員が違う誕生日」は計算しやすいです。
まず、全員が違う誕生日となる確率を計算し、1からその値をマイナスすれば、少なくとも同じ誕生日のペアが一組いる確率を計算できます。
40人がそれぞれ、自分を含めた他の誰とも同じ誕生日にならない確率を見ていきます。
まず40人のうち、1人目の誕生日が1月1日であるとします。
2人目が1月1日以外の誕生日である確率は、\(\frac{364}{365}\)です。2人目誕生日は、1月2日であったとします。
3人目が1月1日、1月2日以外の誕生日である確率は、\(\frac{363}{365}\)です。
これを40人分出してすべて掛け合わせれば、40人全員が違う誕生日の確率を出せます。
$$\frac{365}{365}×\frac{364}{365}×\frac{363}{365}×…\frac{(365-39)}{365}$$
$$=0.10876$$
となります。
最後が「365-39」で「40」でなく「39」なのは、1人目はどの誕生日でも誰とも重ならないので365から1を引く必要がないためです。
40人いて誰も誕生日が一致しない確率は、10.876%ですね。
「誰も誕生日が一致しない」の余事象は、「同じ誕生日のペアが少なくとも一組いる」になります。
同じ誕生日のペアが少なくとも一組いる確率は、100%から10.876%を引けばいいのですから、
$$1-0.10876=0.89124$$
89.124%もあるのです。誰と誰の誕生日が重なるかはわかりませんし、誕生日が重なるペアは複数できる確率も全て含めて、89.124%となります。
少なくとも同じ誕生日のペアが一組いる確率の計算式
学校のクラスをn 人とすると、次の式で計算できます。
$$1-\left(\frac{365}{365}×\frac{364}{365}×\frac{363}{365}×…×\frac{365-(n-1)}{365}\right)$$
50人のクラスになると、こうです。
$$\frac{365}{365}×\frac{364}{365}×\frac{363}{365}…\frac{365-49} {365}$$
$$=0.02963$$
100%から2.963%を引けばいいのですから、
$$1-0.02963=0.97037$$
50人のクラスなど、なにかしらの50人の集まりがあった場合、 誕生日の一致するペアが少なくとも1組できる確率(1組以上できる確率)は約97%です。100%に近いですね。
集団の人数と、その中に同じ誕生日の人がいる確率は、下の表のようになります。
人数 | 確率 |
---|---|
1人 | 0% |
2人 | 0.27% |
3人 | 0.82% |
4人 | 1.64% |
5人 | 2.71% |
6人 | 4.05% |
7人 | 5.62% |
8人 | 7.43% |
9人 | 9.46% |
10人 | 11.69% |
20人 | 41.14% |
30人 | 70.63% |
40人 | 89.12% |
50人 | 97.04% |
60人 | 99.41% |
70人 | 99.92% |
80人 | 99.991% |
90人 | 99.999% |
100人 | 99.99997% |
70~80人も集まれば、そのなかで誰かと誰かが同じ誕生日になる確率は、ほぼ100%になるのです。学校や職場で、身の周りに同じ誕生日の人たちがいても、なんら珍しい話ではありませんね。