余事象を使うと手間をかけずに確率を計算できる

余事象を使った確率の計算について考えてみましょう。

余事象とは、「その事象が起きない確率」であり、A という事象があったら、A 以外のできごとが余事象になります。

確率を計算するときには、

  • 確率を出す場合、ふつうに確率を考えたほうが簡単に計算できる場合
  • 普通に考えると難しく、余事象から考えるほうが簡単にできる場合

があります。

たとえば、2個のサイコロを同時に投げて、出た目を掛け合わせた数が奇数になるか偶数になるか考えるときの話です。

パターンは4パターンあります。

1個目の
サイコロ
2個目の
サイコロ
積の結果
パターン1奇数奇数奇数
パターン2奇数偶数偶数
パターン3偶数奇数偶数
パターン4偶数偶数偶数

まず積が奇数になることを考えてみます。

これは、奇数×奇数のときだけですね。

  • 1個目のサイコロが奇数になる確率は、1/2
  • 2個目のサイコロが奇数になる確率は、1/2

ですから、それらを掛け合わせれば、1個目、2個目のサイコロが連続で奇数になる確率が計算できます。

1/2 × 1/2 = 1/4

1/4 が奇数になる確率である、とふつうに計算することが簡単にできます。

でも、2個のサイコロの積が偶数になる確率を、ふつうに考えるときには、

  • 奇数×偶数
  • 偶数×奇数
  • 偶数×偶数

の3パターンを考えないといけませんね。上記したような表をつくって、場合の数を見たりします。

偶数になる確率を計算するには、手間がかかりますが、それよりも、奇数になる確率は簡単に計算できますよね、

ですから、「奇数になる確率」を計算して、その余事象である「偶数になる確率」を計算したほうが早いです。結果は奇数か偶数しかないのですから、

1 - 積が奇数になる確率 = 積が偶数になる確率

となります。計算すると、

1 - 1/4 = 3/4

積が偶数になる確率は、3/4 となりました。

シンプルなことで考えましたが、もっと複雑なものごとになってくると、いちいち計算しているのが難しくなります。

もうひとつの例として、ある受験生が大学受験をするときのことを考えてみましょう。

5つの大学を受験するとします。受験に失敗して浪人はしたくないので、本命に加えて滑り止めの大学も受験し、少なくとも1つの大学に合格したいと考えています。この受験生の実力から考えると各大学の合格率は、

  • ミカン大学 10%
  • リンゴ大学 10%
  • ブドウ大学 30%
  • モモ大学 50%
  • イチゴ大学 70%

であるとしましょう。

それで、どこかしらには受からなくてはいけないのですから、「少なくとも一つの大学には合格する確率」を計算してみましょう。

「少なくとも一つの大学には合格する」とは、1校だけ合格でもいいし、2校だけ合格でもいいし、5校すべての合格でもいいことになります。

このときに、ふつうにさまざまな場合を計算していこうとすると、色々なパターンを計算しなくてはいけません。

全部の大学が受かった。

こっち大学は受かったが、あっちの大学は落ちた。

といったいくつものパターンを計算しなくてはいけません。

具体的には、

  • ミカン大学には合格。リンゴ大学、ブドウ大学、モモ大学、イチゴ大学は不合格。
  • ミカン大学とリンゴ大学には合格。ブドウ大学、モモ大学、イチゴ大学は不合格。
  • ミカン大学とリンゴ大学、ブドウ大学には合格。モモ大学、イチゴ大学は不合格。
  • ・・・
  • ・・

などなどいくつもの場合を計算して、足し合わせなければいけませんね。これは非常に重労働になります。

ここで余事象をつかえば、ラクに計算することができるようになります。

すべての大学に不合格になる確率%を計算し、100%からマイナスすれば、「少なくとも一つの大学に合格する確率」になります。

5つの大学の不合格率は、100-合格率で、

  • ミカン大学 90%
  • リンゴ大学 90%
  • ブドウ大学 70%
  • モモ大学 50%
  • イチゴ大学 30%

です。「全ての大学に不合格になる確率」を計算するには、これらを掛け合わせればいいのですから、

9/10 × 9/10 × 7/10 × 5/10 × 3/10

= 0.08505

≒ 8.5%

となります。「全ての大学に不合格になる確率」は8.5%です。

その余事象である「全ての大学に不合格にならない確率」=「少なくとも1つの大学に合格する確率」は、

100% - 8.5% =  91.5%

となるわけです。

このように余事象をつかうことで、確率の計算が楽になることがあります。

もし、ふつうに計算していくと大変な手間がかかるなと思ったときには、余事象をつかっての確率計算ができないか、考えてみましょう。