嘘にはならないはず…印象操作できるグラフの作り方

グラフをつくるときには、どのようなグラフサイズにするか、目盛りはいくつからいくつにするか、 どのからどこまでのデータをのせるかなど、グラフ作成者がすべてを決定します。

そうやってあれこれとどんなグラフをつくろうかと考えるのは、主張の根拠としてのデータをわかりやすく示し、見せる相手にスッと内容を把握してもらい、自分の主張を受け入れてもらいたいからですよね。

「この数字がこのように増加しています」とか、「この数字がこんなに減ってしまています」など、 どんなグラフにも作成者が示したい内容があるのです。

たとえば、年々減少してきている平均年収の推移グラフを見せて、「こんなに年収は下がってきているのです。なにか対策を打たないといけない。」と主張して相手に賛同してもらいたいとします。

そのときには、まず相手に「こんなに年収は下がってきているのか。」と理解してもらわないといけません。

実際の数字は変えられませんが、グラフの見せ方として、減少している様子を強調することが可能ですし、 実際に使われています。

グラフをこんなふうにつくると、データはこんな見え方になるということを、実際にいくつかの例をあげて見ていきましょう。

まず、普通な感じの平均年収の推移グラフを見てみましょう。縦軸の原点は0から始めるのが正しいのです。

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年々、平均年収が減少してきていますね。

2009年に大きく減少してからは下げ止まっていますが、 かつて1997年には467万円あった平均年収が、400万円近くに下がってきています。

このグラフにいろいろと細工をして、 どのように見え方が変わってくるか見てみましょう。

縦軸の目盛りを調整し、原点をゼロじゃなくす

平均年収の額を示している縦軸の目盛り400~480万円に調整してみます。平均年収の最大値は467万円、最小値は406万円ですから、 最大値と最小値のギリギリのところで目盛りを設定したわけです。

すると、もともとのグラフよりも 減少が大きく見え、平均年収ってすごい減ってきているんだ、と感じやすくなります。 2009~2013年の400万円ちょっとの平均年収は棒グラフが小さくなってしまって、少ないような気になってしまいます。

この程度の縦軸の端折りはよく見られます。

・縦軸の目盛りを400~480万円にする

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逆に目盛りを0から500万円にしてみると、1997年の467万円でも、2009年の404万円でも、棒グラフのサイズにはあまり違いが無くなってしまいます。そのため、このグラフからはあまり変わっていないような印象を受けます。

このように原点を0にするのが正しい。

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このように目盛りの調整をするだけで、数字が大きく減少している印象を与えることができます。数字が増加するときにも使えますし、変化のおおげさに見せたいときに使える手段です。逆に変化があまりないと主張したいのであれば原点がゼロのグラフのほうがいいですよね。

グラフを伸縮させる

次に目盛りはそのままでグラフを縦に伸ばしまてみました。図で見たときの、棒グラフの高さの下がり具合が 大きくなります。

・グラフを縦に伸ばす

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グラフを縦に伸ばして、かつ縦軸の目盛りを400~480万円にすると、ちょっとやりすぎでしょうか。

・グラフを縦に伸ばす、かつ縦軸の目盛りを400~480万円にする

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逆に縦に縮めると、減少具合が棒グラフでははっきりしなくなります。

・逆に縦に縮める

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角度を変える

古い年代を手前に、最近の年代を奥に見えるように、角度をつけて表示します。遠近法です。すごいです。目の錯覚が起こされますね。

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データの一部だけを見せる

とくに大きな変化をしているところだけを切り取って使ったり、逆に見られると都合の悪い部分を切って捨て、グラフをつくります。

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この年収のグラフで、近年になって年収が下がってきているように見えます。

でも、もっと長い期間で見てみるとこうなっているのです。

・1980年~2013年のグラフ

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「最近になって平均年収が下がってきている」と主張したいときに、このようなグラフを出してしまうと、 グラフからは年収が下がっているという印象を受けなくなってしまいます。

この場合は、最も平均年収が高かった97年付近から2013年までに かけてのデータを切りとり、そこだけ見せるようにすれば、「最近になって平均年収が下がってきている」印象を与えることに成功するでしょう。

さらに長い期間、戦後から2013年までのデータを表示してしまうと、「最近になって平均年収が下がってきている」の話とはまったく違う印象を、見る人に与えます。

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「○○のように見せたい」という意図にそって、最適な区間でデータを区切り、目盛りを調整したり、 グラフを伸ばしたり縮めたりすればいいわけです。これによって相手の印象操作を図ります。

最後に、発表の場でこの手法を行うのもよいですが、どうなろうと私は責任を持ちませんよ。白けるか、総ツッコミを受けるかもしれませんね。