全数調査と標本調査の違い

調査は、その対象全体を調査するのか、それとも一部だけを調査するのかによって、全数調査と標本調査に分けることができます。

それぞれが、どのような調査なのか、どのようなメリット・デメリットがあるのかを説明します。

全数調査

どんな調査か

知りたいと思っている対象のすべてを調査することを全数調査といいます。または悉皆調査(しっかいちょうさ)ともいいます。

全体を知るためには、全体を調べなければならない。このような考えに忠実に従って実施されているのが、総務省統計局が行う国勢調査でしょう。国勢調査は、総務省によれば、我が国に住んでいるすべての人と世帯を対象とする国の最も重要な統計調査、とされています。

ある会社内で、社員に対してアンケート調査をするときのことを考えてみます。社員数は5000人。この5000人全員にたいしてアンケート調査をするのが全数調査です。


社内の人たち、その全員が調査対象者になります。

全数調査のメリット

調査対象のことが正確にわかります。完全に正確に調査対象全体のことを知るためには、全数調査をするしか方法がありません。全数調査をして得られたデータの平均値は、調査対象の平均値として間違いないことは当然です。

全数調査のデメリット

調査対象のデータの数を多い場合、非常に労力・手間がかかり、長い時間を必要とします。その他の調査コストも大きくなります。ほとんどの場合でデータの数は多いでしょうから、全数調査をやるとなると、労力や時間、その他の調査コストが大きくなるのがふつうです。

ただ、WEBに関連事業でのデータ、あるいは工場であってもデータを収集する設備やシステムが構築されているような工場でのデータであれば、リアルタイムで調査対象の全てのデータを取得できることもあります。その場合であれば、全データを活用すればよいです。

労力をかけた割には、全数調査の結果と標本調査の結果にほとんど違いがない場合も多いでしょう。たとえば、上記の社内アンケートで、社員5000人に対してアンケートをとったときの結果と、半分の2500人に対してアンケートをとったときの結果では、量ではなくて比率で見れば、ほぼ差がないのではないかと思われます。しかし、アンケートを配布したり、回収したりする労力には、大きな差があります。

また、全数調査が実施したくてもできない場合があります。調査というよりも検査の話になりますが、製品の検査をするときに、製品自体を分解して壊してからでないと検査できないといった場合です。これは破壊検査と呼ばれます。破壊検査を全数にたいして行ったら、製品が無くなくなってしまいますから意味がありませんよね。

たとえば、食品工場でつくった食品を検査するときには、完成した食品を切り崩すなどして一部分を使用してしまいますから、その食品はもう販売することはできません。

標本調査

どんな調査か

調査対象の全体ではなくて、一部分だけを調査する方法が標本調査です。全体から抜きとった一部のことを標本と呼びます。テレビの視聴率、総務省による家計調査などは、標本調査によって調べられています。

上記した例を再度書きますが、ある会社内で社員に対してアンケート調査をするときのことを考えてみます。

社員数は5000人いるとしたら、この5000人全員にたいしてアンケート調査をするのが全数調査でしたが、全員ではなくて、一部分の300人だけに調査をするならば、これは標本調査となります。

図のように、調査対象全体から抜きとった一部の人だけを調査します。

標本調査のメリット

労力・手間をかけずに、調査対象全体をある程度正確に知ることができる点です。

全数調査のデメリットのところに書いたように、社員5000人の会社内アンケートで、5000人全員に対してアンケートをとったときの結果と、半分の2500人に対してアンケートをとったときの結果を比べると、量ではなくて比率で見れば、ほぼ差がない結果を得ることができるはずです。これがメリットです。

たとえば、会社の福利厚生についての満足度を調査するときに、満足している人は○○%、満足していない人は○○%という結果が、5000人に調査しても、2500人に調査しても差がほぼでないでしょう。

つまり、労力をかけずに調査対象全体のことを知ることができるのです。これは、2500人も必要ないかもしれませんね。アンケートを実施して何を知りたいのか、その知った情報をどのようにつかうのかにもよるのですが、ざっくりとした大まかな数字だけを知れればそれでよい、と考えているのであれば、5000人中、100人だけ調査すれば、事足りるかもしれません。

そうなれば、調査の労力、時間、その他コストは、全数調査と比べて激減します。

標本調査のデメリット

調査対象全体のほんとうの姿を知ることができない点です。たとえば、平均値を知りたいとしても、ほんとうの値を知ることはできません。すべてを調査していないのですから、これは当たり前の話です。

実際に知りたいのは、調査対象全体のことなのですが、標本調査で実際に調べるのは一部分です。一部分から、全体がどのようになっているのかを推測することになります。

得られたデータから計算した平均値は、調査対象全体の平均値とは違います。ある程度のデータを集めれば高い精度で推測できますし、誤差もわずかになるでしょうが、調査対象全体の平均値は、あくまで推測値です。

調査結果の正確さと調査コストを考える

調査対象全体を調査して知ろうと思えば、コストがかかります。でも、コストを減らそうとすると、調査対象全体を正確には知ることができなくなります。

では、どうするか。

完全に正確に知るのでなくて、多少の誤差があったとしてもそれでよいのであれば、標本調査のほう選べばいいわけです。わずかな誤差にしたいのであれば、標本調査でもっとデータを多くとればいいのです。

標本調査においては、コストをかけないようにするために調査するデータ数を少なくするほど、その調査結果は、対象全体を調査したときの真の結果から遠ざかる可能性が高くなります。

逆に、コストをかけて調査するデータの数を増やすほど、その調査結果は、対象全体を調査したときの真の結果に近づく可能性が高くなります。

どこかに自分が行う調査にとってのベストなポイントがあるはずです。

ほんとうに重要なことで全数を調査しなければならないこともあるでしょうが、一般的に行われる調査はほとんどが標本調査です。労力や時間をかけず、でも必要なデータ精度や調査結果は得られるように、ベストなポイントを探って調査を設計することが重要です。

参考:たくさん調査して標本のデータ数を増やすと誤差が減りにくくなっていく