仮説検定では、なぜまわりくどく、わかりくい説明をするのか

検定とはどういう行為なのか。考え方と検定の流れに書きましたが、検定とは、仮説が成り立つのかどうか確率を用いて、偶然に起きたことなのか、それとも起こるべくして起きたことなのか、判定を下す行為です。

仮説検定は背理法

このときに立てる仮説は、対立仮説といって、ほんとうに主張したいこととは逆の仮説を立てます。その仮説を否定することで、自分がほんとうに主張したいことが正しいのだと証明する方法です。

ジャンケンに強いことを証明したいのであれば、対立仮説として、

  • ジャンケンに強い

ではなくて、

  • ジャンケンは他の人と同じ強さである

と仮説を立てます。

観測したデータを集めて、「ジャンケンは他の人と同じ強さである」という仮説に矛盾がないかを調べます。たとえば、実際にジャンケンしてみたところ、何回も連続で勝利をおさめたとしたら、仮説に矛盾がありますよね。「ジャンケンは他の人と同じ強さである」はずなのに、連続で勝利しているのはおかしいのです。

ですから、この仮説は間違っているのではないかと考えて、否定をすることができるわけです。そして、ジャンケンは他の人と同じ強さではないのだから、ジャンケンは強いのだ、と結論づけることができます。

この証明方法は、数学で背理法と呼ばれています。

まわりくどくて、わかりにくやり方をする理由

では、なぜこのようにまわりくどくて、わかりにくいやり方をするのでしょうか。

仮説が真であると証明するのは難しい

それは、立てた仮説の正しさを証明するのはとても難しいことだからです。一方で、仮説が正しくないことを証明するのは可能なことです。

黒いカラスがこの世のどこかに存在することを証明するには、黒いカラスを1羽だけ見つければ証明できます。では、この世の全てカラスは黒いことを証明するには、どうしたらいいでしょうか。「この世のカラスは黒い」と仮説を立ててそれが正しいことを証明しようとしたら、生息するすべてのカラスを観察して黒いことを確かめなければいけませんよね。これは無理な話です。

しかし、「この世の全てカラスは黒い」ということに反証する(事実でないことを証明する)のであれば、白いカラスを見つければ、できてしまうのです。この世の全てのカラスが黒いとしたら、白いカラスがいるのは矛盾していますよね。

同じく「この世の全てのカラスは白い」ということにも反証できます。

「ジャンケンに強い」という仮説を証明するのであれば、数人に勝っただけでなく、もっと他の人とも勝負しないとわからないよね、という話になります。しかし、「ジャンケンは他の人と同じ強さである」ことに反証するには、その矛盾点を見つければいいのです。何回か連続で勝ては、他の人とは強さが同じではないよね、と言うことができます。

ところで、「ジャンケンは他の人と同じ強さ」という仮説が棄却できなかった場合であっても、それは積極的に「ジャンケンは他の人と同じ強さ」であるという仮説を証明したわけではありません。

もともと帰無仮説は、棄却するために立てている仮説です。

仮説を採択した場合は、仮説を棄却しなかったということであり、仮説が正しいことを積極的に証明しているわけではありません。仮説が間違いとは言えなかったということです。

仮説検定の流れや、「棄却」などの用語については下記の記事に書いていますのでよろしければ参考にしてください。

参照:検定とはどういう行為なのか。考え方と検定の流れ

重要な誤りを第1種の誤りにできる

背理法では、重要な誤りを第1種の誤りとなるように設定することができます。

とある製薬メーカーが、従来の薬よりも効果がアップさせた新しい薬の開発に励んでいます。実験によってその効果を観測し、検定で判断をするときには、2つの誤りが発生する可能性があります。

その誤りとは、第1種の誤りと、第2種の誤りです。

  • 第1種の誤りは、薬の効果アップはないのに、あると判断してしまうこと
  • 第2種の誤りは、薬の効果アップはあるのに、ないと判断してしまうこと

です。

どちらのほうが致命的な誤りかというと、ないのにあると判断してしまう第1種の誤りでしょう。本当は効果がないのに効果がある、といって世に販売してしまったら問題です。

一方で、本当は効果があるのにない、と判断した場合は、販売はしないことになるでしょう。自社にとってはもったいない話になりますが、世の中に対して迷惑をかけるような問題は発生しません。

どちらの誤りを起こさないようにすべきかというと、第1種の誤りです。第1の誤りを起こさないことが重要な問題となります。

背理法での仮説検定であれば、この第1種の誤りを犯す確率を、有意水準として自分で設定することができるのです。

第1種の誤り、第2種の誤りについては、下記の記事に書いています。よろしければ参考にしてください。

参考:あわて者の誤り・ぼんやり者の誤り