捕獲再捕獲法とは、指定された地域に存在する生物の個体数を推定する方法です。
生物を一度捕獲をし、印など標識をつけたら、自然に戻します。そして、再度捕獲をし、そのなかの標識がついた生物の数から、地域の生物個体数を推定します。
標識をつけることから、標識再捕獲法とも呼ばれます。
この記事では、捕獲再捕獲法の手順や、個体数の推定方法について説明します。
捕獲再捕獲法で生物の個体数を推定する
生態系についての調査で、生物の個体数を把握したい、生物の個体数の変動について研究したいといったときに役立つものです。
どのようなときに、生物の個体数を把握したいかというと、たとえば、外来種問題の解決を図るときです。
もともとそこに生息していなかった生物が人為的に持ち込まれ、生態系に悪影響を与えてしまう問題が、外来種問題です。外来種対策を考えていくためには、まずその個体数を数えなければなりません。
また、実際に駆逐対策など行ったあとに、どの程度の減少したのかなど数字を出さないと、対策に効果があったのかどうか結果がわかりません。
しかし、完全に正しい個体数を把握するには、その地域にいる対象の生物すべてを見つけて数えないといけませんので、全体数を把握することは無理な話です。まあ、不可能でしょう。
よって、生物の個体数は推定によって、おおよそこのくらいの数だろう、と把握することになります。統計学的な方法が活用され、推定が行われるのです。
推定法のひとつが「捕獲再捕獲法」です。
捕獲再捕獲法の手順と個体数の算出方法
ある湖にて、ある魚の個体数を推定するときのことを考えてみましょう。
捕獲再捕獲法は、次のような手順になります。
- まず湖から一部の魚を捕獲する
- その魚に小さな印をつけるなどなんらかの標識をつける
- 標識をつけた魚を湖に戻す
- 日数をおき湖内で散らばるのを待つ
- 再び一部の魚を捕獲する
- そのなかに標識がつけられた魚が何匹いるか数えて、そこから推定を行う
まず湖から、一部の魚を捕獲します。
湖には何匹の魚がいるのかはわかりません。500匹を捕獲して背びれに標識をつけました。
標識をつけた魚を湖に戻します。
日数をおけば、この湖には、標識がついた500匹の魚が散らばっているものとします。
ところで、ほとんど移動しない生物は、この方法での個体数の推定は向いていません。
また、標識することが困難な生物も同様に向いていません(標識をつけても成長によってとれてしまうなどです)。
さて、湖内では、標識をつけた魚がうまく散らばりました。
再びランダムに500匹の魚を捕獲します。
その魚たちの背びれを見ると、10匹の魚に標識がついていました。
一度目に捕獲して標識をつけた500匹の魚は、湖のなかに散らばっていて、湖の中のいろんなところにいます。
そこから、二度目に捕獲した500匹のうち、10匹に標識がついていました。この「二度目に捕獲した500匹」と「標識つきの10匹」が湖全体をあらわすサンプルと考えることができます。
10/500匹の割合で標識がついています。
このサンプルから、湖全体の個体数を推定すると、サンプルと同じように、湖全体の魚も、10/500匹の割合で標識がついていると考えることができます。
で、湖全体で標識がついた魚は、何匹かというと、一度目に捕獲して標識をつけた魚の数で500匹です。
ですから、私たちにはわからない湖全体の魚の数に、10/500を掛けると、標識がついた全ての魚の数である500となるのです。
つまり、湖全体の個体数をNとすれば、
N×10/500=500匹
という式をつくれます。この式を解いていけば、
N=500匹÷(10/500)
N=500匹×(500/10)
N=25000匹
湖全体に生息する魚の数は、25000匹であると推定できました。
あるいは、比で考えてみてもよいでしょう。まあ同じことなのですが。
「全体の魚の数:標識のついた魚の数」の比を見てみると、
■湖全体の「全体の魚の数:標識のついた魚の数」
湖全体の魚 N匹:標識のついた魚 500匹(一度目の捕獲)
=N:500
■サンプル(二度目の捕獲)の「全体の魚の数:標識のついた魚の数」
サンプル全体の魚 500匹:標識のついた魚 10匹(二度目の捕獲)
=500:10
これらから、
N:500=500:10
の比となります。これを解けば、
N=25000
となります。
このように、捕獲再捕獲法を用いれば、ある地域に生息する生物の個体数を推定することが可能なのです。