不等式の性質。等式の性質。同じ数を足す・引く・掛ける・割る




不等式とは、a<b のようにあらわされる不等号(<、>)をつかった式のことです。

不等号を挟んで、

  • 左の式を左辺
  • 右の式を右辺

と呼びます。

左辺と右辺は、いずれかが大きい状態であることを示します。ですから、

  • 左辺と右辺の両方に10を足す
  • 左辺と右辺の両方から10を引く
  • 左辺と右辺の両方を10倍にする
  • 左辺と右辺の両方を10分の1にする

こういった操作を行っても、不等号の向きは変わらなさそうです。

左辺と右辺の両方に、同じ数を足す・引く・掛ける・割るのであれば、不等式はそのまま成り立ちます。

足したり引いたり、掛けたり割ったりする数が、正の数であれば、基本的には、等式の性質と同じです。
等式とは、a=b のようにあらわされる等号(=)で結ばれた式のことです。

しかし、負の数を掛けたり、負の数で割ったときには、不等号の向きが変わるという性質があります。

不等式の両辺に同じ数を足す、引く、掛ける、割るときには、その数が正の数なのか、負の数なのか、注意が必要です。

両辺に同じ数を足しても不等号の向きは変わらない

a<b ⇔ a+c<b+c

両辺に同じ数cを足しても、不当式はそのまま成り立ちます。

簡単な不等式で考えてみます。

2+5 < 4+5

7 < 9

この等式の両辺に3 足してみると

2+5+3 < 4+5+3

10 < 12

となり、当たり前ですが不等式はそのまま成り立ちます。

※記号 ⇔ について

⇔ は同値を示す記号です。p⇔qのとき、pとqは同値といい、pが成り立つのと、qが成り立つのは同じだということです。

両辺から同じ数を引いても不等号の向きは変わらない

a<b ⇔ a-c<b-c

両辺から同じ数cを引いても、不等式はそのまま成り立ちます。

簡単な等式で考えてみます。

5-2 < 7-2

3 < 5

この不等式の両辺から2を引いてみると、

5-2-2 < 7-2-2

1 < 3

となり、当たり前ですが不等式はそのまま成り立ちます。

両辺に同じ数を足すことや、両辺から同じ数を引くことは、

$x$+5 < 15

という$x$ がつかわれた式で、移項をして$x$の値を計算するときに用いられます。計算方法としては、左辺の5 を右辺に移項して、

$x$ < 15-5

$x$ < 10

としますよね。

これは、

$x$+5-5 < 15-5

$x$ < 10

としてあげて、両辺から5 を引いているのと同じことです。

両辺に同じ正の数を掛けても不等号の向きは変わらないが、同じ負の数を掛けると不等号の向きが変わる

両辺にかける数cが、正の数(0<c)のときと、負の数(c< 0)のときで、分けて考えます。

0<c のとき、

a<b ⇔ a×c<b×c

両辺に同じ数cを掛けても、不等式はそのまま成り立ちます。

簡単な数式で考えてみます。

5-2 < 7-2

3 < 5

この不等式の両辺に2 を掛けてみると、

(5-2)× 2 <(7-2)× 2

6 < 10

となり、不等式はそのまま成り立ちます。

一方、

c< 0 のとき、

a<b ⇔ a×c>b×c

両辺に同じ数cを掛けると、不等号の向きが変わります。

5-2 < 7-2

3 < 5

この不等式の両辺に-2 を掛けてみると、

(5-2)×(-2) >(7-2)×(-2)

-6 > -10

と、不等号の向きが変りました。

両辺を同じ正の数で割っても不等号の向きは変わらないが、同じ負の数で割ると不等号の向きが変わる

掛けるときと同じく、両辺を割る数cが、正の数(0<c)のときと、負の数(c< 0)のときで、分けて考えます。

0<c のとき、

a<b ⇔ a÷c<b÷c

両辺を同じ正の数で割っても、不等式はそのまま成り立ちます。

こちらも簡単な数式で考えてみます。

10-2 < 16-4

8 < 12

この不等式の両辺を4で割ってみると、

(10-2)÷ 4 <(16-4)÷ 4

2 < 3

となり、不等式はそのまま成り立ちます。

一方、

c< 0 のとき、

a<b ⇔ a÷c>b÷c

両辺を同じ負の数で割ると、不等号の向きが変わります。

こちらも簡単な数式で考えてみます。

10-2 < 16-4

8 < 12

この不等式の両辺を-4で割ってみると、

(10-2)÷ (-4) >(16-4)÷ (-4)

-2 > -3

と、不等号の向きが変りました。

まとめ

ある不等式にたいして、

  • 両辺に同じ数を足す
  • 両辺から同じ数を引く
  • 両辺に同じ正の数を掛ける(0<c のとき)
  • 両辺を同じ正の数で割る(0<c のとき)

これらの操作を行っても、不等式は成立したまま。不等号の向きは変わりません。

しかし、

  • 両辺に同じ負の数を掛ける(c< 0 のとき)
  • 両辺を同じ負の数で割る(c< 0 のとき)

これらの操作を行うと、不等号の向きが変わり、左辺と右辺の大きい・小さいが逆転します。