中小企業では統計学は役に立たない?統計学で得た結果をシンプルに伝えるとよい

統計学を仕事に活用して役立てることができるかどうか、これは、職場の環境による部分もあるのではないかと思います。

統計学的な説明はわかりにく

統計学自体がなにか利益を直接生むわけではありません。統計学を活用して得た結論で意思決定をして、利益を生む行動や仕事の進め方ができるようになることで、統計学によって利益貢献ができるのです。あくまで道具として統計学が役立ちます。

統計学で得た結論でもって「こうやっていこう」「こっちを選ぼう」と決めるわけです。

そのときには、上司なり他の部署の人に説明をしますよね。当たり前ですが、説明をするほうが統計学をわかっていても、説明を受けるほうが統計学がどのようなわかっていないと、話が通じません。

ですから、細かいところは抜きにしても統計学についてわかっている人たちが多い環境では統計学は役に立ちやすいですが、統計学をまったく知らない人たちだけの環境では、統計学は役立ちにくいかもしれません。

社内で統計学が重要視されている会社として、たとえばソフトバンクがあります。ソフトバンクでは、データ分析を重視していて、孫正義社長が社員に身につけてほしいと考えているスキルの一つに、統計学があるようです。こういった環境であれば「統計学的に言えば○○である」みたいなことを言っても話が通じますし、受け入れてくれる環境です。

一方で、一般的な中小企業では、統計学がどうのこうのと話をしても、通じないことがほとんどではないかと思います。会社としてデータ分析をする部門など設けることも、あまりなさそうです。

自分の業務のなかでは、統計学を活用することはできます。とはいえ、自分の業務のなかだけではなくて、もっと大きなところで活用して、会社の利益を生み出していきたいと思いますよね。

その場合、他部署の人とのやりとりをして進めていく仕事にあっては、お互いに統計学についての理解がないと、統計学を活用できないのではないか、と思うのです。

「検定の結果、こうなりました。P値は○○%です。」と言っても、「検定って?P値って何それ?」となってしまい、検定とはなにか、P値とはなにかといったところから、いやもっと前の段階から説明しないといけませんよね。でも、そんな説明をじっくり聞いてくれる時間などないでしょう。

プレゼンでもあれば、説明できる時間が与えられますが、日常業務の中で、統計とはなんぞやと説明しようとしても、数分ももたずに、話をさえぎられてしまうでしょう。

会社の研修などで、統計学について学ぶこともあるかもしれません。でも、研修を受けただけでは、表面的なことはわかっても、理解をして活用するというところまでは至らないのではないでしょうか。自分での学習と活用が必要です。

これは、あるデータを社内で集めようとしたときのことです。「平均値を推定するには、サンプルをこれだけとっておけば十分でしょう。」と説明をしたことがありました。でも、やはり反応は微妙でした。どうでもいいけで、もっとたくさんデータとればいいんじゃないの?という反応でした。

ふつう、自分が理解できないこと言われたら、それをそのまま、はいそうですかとは言えないですよね。

処方箋

そういった統計学を知る人がほとんどいない会社で統計学を活用するにはどうしたらよいか。統計学っぽさを無くすことです。

結果をシンプルに伝えます。

実験で2つの集団の違いを調べ、平均値の差を見たとしましょう。たとえば、メーカーにおいて、製造の方法を変更してみて、その結果、ある特性値がどうなるかを見てみる実験をしたとします。で、平均値が大きくなったほうが望ましいとしましょう。

「この要因をこう変えれば、平均値が上がりますよ」と、簡単な表で示したり、棒グラフで示す。これだけで十分です。

自分のなかで、分析の設計、データ集め、検定など行うときは、学んだ統計学を活用しますが、上司や他部署に説明するときには検定の結果を資料に載せる必要もないし、説明する必要もないのではないかと。自分のなかでは検定をして有意な差があるかどうか確認しますが、有意な差がはっきり出ていれば、それでいいのではないかと。

グラフは難しいものではなくて、シンプルなグラフがいいです。上に書いたように棒グラフで、実験でこの要因をこう変えたら、これだけの効果がありました、と簡単に示す。散布図で、このxの変数をこうすれば、yはこうなる効果がありましたと示す。余計なものはつけずにシンプルにします。

「統計学的に~」と統計学的になにか言おうとするのでなくて、むしろ統計学臭を消した方が受け入れてもらいやすい気がします。