平均への回帰とはなにか。遺伝学者ゴルトンの発見




平均への回帰とは、データに偏りがあったとしても、いずれ平均値へと近くなる現象のことをいいます。

親の身長と、子供の身長の間にある関係について見てみましょう。19世紀末、遺伝学者のフランシス・ゴルトンは、親と成人した子供の身長についてのデータを発表しました。親の身長に対して、子供の身長の平均値と標準偏差を確認しました。

そこでわかったことは、

  • 低い身長の親から生まれる子供は、それよりも少し高い身長となる傾向があること
  • 高い身長の親から生まれる子供は、それよりも少し低い身長となる傾向があること

でした。とくに親の身長が平均から離れていて、とても高い、またはとても低いほど、この傾向が強く見られました。これが平均への回帰で、先祖がえりの現象とも呼ばれるものです。

下記の表を見てみてください。親の身長と子供の身長の相関図です。

ゴルトンは、父親は母親よりも8%背が高いとして、

(父親の身長 + 母親の身長 × 1.08)/ 2

を親の身長として扱いました。

青い点線が回帰直線です。データの各点を1本の線でなぞることを回帰といって、直線でなぞったものが回帰直線です。親と子供の身長のデータの関係は、この青い線で示すことができています。

黒い点線も描き入れています。これは、親と子供の身長が同一になる箇所を結んだ線です。

このグラフからは、

  • 平均よりも背の低い165cmの親から生まれた子供は、167cm~168cm程度の身長になる
  • 180cmの親からは生まれた子供は、177cm~178cmくらいになる

こういった傾向があるのが見てとれます。

もし仮にですが、親の身長と子供の身長が同じになるのであれば、下記のようなグラフができあがるでしょう。

さきほど見た平均の回帰が見られるデータの散布図は、回帰直線が少し傾いていましたね。

もし、平均への回帰が存在せず、仮に背の高い親から生まれた子供は、必ず同じくらい、あるいは親よりも背が高くなるのだとしたら、世代をかさねるにつれて、どんどん背が高くなっていってしまいます。

そして、背の低い親から生まれた子供は背が低くなり、世代をかさねるにつれて、どんどん背が低くなっていってしまいます。

しかし、そうはならず、人の身長には多少の変化はあったとしても、比較的安定していることが、平均への回帰が存在することを説明しています。