確率の積で製品・サービスの信頼度を測る




「確率の積」とは、AとBの事象がありそれぞれ独立であった場合、AとBの確率を掛け合わせ、AとBがともに起こる確率を計算できることです。

仕事、あるいは製品・サービスの信頼性を考えるときには、この確率の積がつかえます。

信頼性とは

JISによれば、信頼性とは「一定の条件下で、安定して期待される役割を果たすことができる能力」とあります。製品・サービスには期待されている役割がありますよね。それらが、きちんと規定の期間、実現できていれば信頼性があることになります。

たとえば、プリンターであれば、文字がかすれることなく、紙詰まりしてしまうことなく、保証した期間使い続けられることです。

電車であれば、時刻表どおりに発車して、時刻表どおりの時間に目的の駅についてくれることです。さらに車内の清掃状況や空調管理など車内環境もユーザーに不快感を与えないようにしており、事故もないことです。

これらがきちんと果たされていることが、プリンターや電車に対する信頼性となるでしょう。

信頼性の低いよりも高い製品のほうが、顧客に支持されるのは当然の話ですから、メーカーでもサービス会社でも信頼性を高める努力をします。

信頼性を高めるには

ところで、私は昔プリンターの製造工場で短期の仕事をしていたことがあります。

長いライン上に人がずらっと並び、プリンターの機械の一部が流れてきます。最初は、プラスチックの型のようなものがラインに流されます。ライン上の各工程で小さいプラスチックのパーツとか、スポンジなどが付けられていきます。いろんな人が部品を付け加えていって、プリンター内蔵される文字を印字する部品へと変貌していました。

さらに、そういったラインがいくつかあって、他のラインではまた別の部品をつくっており、それらを最終的に組み立てると、プリンターになるのでした。

では、このプリンターの信頼性を高めるにはどうしたらいいのでしょうか。また、プリンターに限らず、最終的に信頼性の高い製品・サービスをつくるにはどうしたらよいでしょうか。

最終的にできあがるものの信頼度は、それぞれの工程が間違いなく正しくできる確率を掛け合わせたものになります。最終的な製品の信頼性を高めるためには、各工程の信頼性を高めていくことに他なりません。

30の工程によってつくられる製品の信頼度を考えてみましょう。信頼度とは信頼性を数値であらわすものです。

各工程で100%間違いない作業ができていれば、その部分は完璧にできていることになります。最終製品も完璧で信頼度は100%です。その場合、製品が不具合なく故障せず1年間つかえるようになるとしましょう。

工程のどこかに間違いがあり最終的な信頼度が低くなると、製品に不具合が発生し1年間の使用に耐えられないとしましょう。

しかしそれぞれの工程で100%完璧に作業をするのは難しく、みんな頑張って各工程でなんとか99%の確率で間違いのない作業をやれたとしましょう。

  • ひとつ目の工程では99%間違いない作業ができている
  • ふたつ目の工程でも同じく99%間違いない作業ができている
  • ふたつ目の工程でも同じく99%間違いない作業ができている
  • …以下同じ

これらの%を掛け合わせると、最終的にできあがる製品の信頼度が計算できます。各工程で99%もの高い%で間違いのない作業ができているわけですから、最終製品の信頼度も問題はなさそうなのですが…、これを計算すると、

0.99×0.99×0.99・・・と30個分掛けてくので
0.9930 = 0.7397

≒ 73%

なんと、各工程で99%の高い精度で作業ができていたのですが、それが連なると最終的には73%の信頼度になってしまうのです。仮に73%が100個中73個は良品、27個は不良品で1年以内に故障する製品を示すものとしたら誰も買いたくないですよね。

100%不具合のない製品をつくるのは現実的にはできないものですが、それに近づけていく努力は必要です。最終的に完成した製品が99%の信頼度とするには、各工程では何%の精度が必要なのでしょうか。

  • 30の各工程で99.5% → 最終製品は86.03%
  • 30の各工程で99.6% → 最終製品は88.67%
  • 30の各工程で99.7% → 最終製品は91.38%
  • 30の各工程で99.8% → 最終製品は94.17%
  • 30の各工程で99.9% → 最終製品は97.04%
  • 30の各工程で99.99% → 最終製品は99.70%
  • 30の各工程で99.999% → 最終製品は99.97%
  • 30の各工程で99.9999% → 最終製品は99.997%

最終製品を99%の信頼度とするには、30個の各工程の人が99.99%といったレベルで間違いなく作業をしなければならないのです。最終製品の高い信頼性を維持するのは大変なことなのです。

これは、製造部門だけの話ではなくて会社全体の仕事にもいえることです。

資材を仕入れる購買部門、その資材をつかってモノづくりする製造部門、製品の設計をする設計部門、需要予測をし生産計画を立てる生産管理部門、仕事をとってくる営業部門、基幹部門を含めた全社をまとめる経営管理部門があります。

購買部門、製造部門、設計部門、生産管理部門、営業部門、経営管理部門、それぞれで、まあまあ、そこそこのレベルで仕事を行っていては、 最終的な信頼度は高くなりません。

まあまあ上手くやっているよ、というくらいだと普段の仕事も目標の達成率も80%くらいのできでしょう。

6部門のそれぞれで、「80%できました。まあ合格点です。」といった状態だと、

0.80 × 0.80 × 0.80 × 0.80 × 0.80 × 0.80 = 0.262144

会社の仕事全体のできとしては、26.21%の信頼度になってしまうのです。各部門、各部門のなかの各個人の仕事の信頼度をかなり高く維持しないと、最終的な会社の仕事のできがよくならないことがわかります。